目次
通常必要とされるAGA治療の内容
AGAが原因で薄毛になったり抜け毛が増えたりする症状には、通常服用するタイプの内服薬と頭皮に塗布する外用薬を用いて治療が行われます。
ホームケアが可能なシンプルな内容ですが、日本皮膚科学会が定める「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」で推奨されている治療法です。
まずは、AGA治療の基本となる内服薬と外用薬について説明します。
参考 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版公益社団法人日本皮膚科学会内服薬
クリニックで処方される内服薬にはプロペシアやザガーロがあります。
それぞれのジェネリックであるフィナステリドやデュタステリドを取り扱っているクリニックもあります。
いずれも、男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインでは推奨度A(行うよう強く勧める)に分類される治療薬です。
なお、プロペシアやザガーロにはAGAの原因物質を阻害する働きがあるため、抜け毛予防、発毛治療ともに用いられます。
治療は1日1錠服用するだけなので続けやすいでしょう。
また、クリニックによってはミノキシジルタブレットを処方するケースもあります。
ミノキシジルの内服は利益と危険性が十分に検証されていないため、推奨度D(行うべきではない)に分類されています。
しかし、患者の希望や薄毛の進行具合によっては、医師の管理のもと発毛治療に用いられることがあります。
そもそも「内服薬」とは?
内服薬とは、口から体内に取り入れる薬のことを指します。
このタイプの薬は、錠剤、カプセル、液体(シロップ)など、様々な形状で提供されています。
内服薬は飲み込まれることで消化管(胃や腸)に達し、そこから体内に吸収されます。
吸収された薬は血液に乗って全身を巡り、病気や症状を治療するための働きをします。
例えば、風邪薬や抗生物質は内服薬の一種です。
これらの薬は体内に取り込まれてから、ウイルスや細菌といった問題を引き起こす病原体と戦う助けをします。
また、高血圧の治療薬や糖尿病の薬など、特定の病状を管理するために定期的に飲む内服薬もあります。
外用薬
発毛が目的のAGA治療では、主にミノキシジルが配合された外用薬が処方されます。
ミノキシジルの内服と違い、外用薬はガイドラインで推奨度Aに分類されているのが特徴です。
ミノキシジルには血管拡張作用があるため、頭皮の血流を改善し髪の成長を促す効果が期待できます。
ミノキシジル配合外用薬は市販品もありますが、より濃度の高いタイプを取り扱っているクリニックも少なくありません。
また、推奨度B(行うよう勧める)に分類されているアデノシン配合外用薬を取り扱っているクリニックもあります。
男性型脱毛症の被験者を対象にした試験で、アデノシンはミノキシジルと同程度の有用性があることが確認されています。
また、濃度の高いミノキシジル配合外用薬を塗布できない女性も使用できる特徴があります。
そもそも「外用薬」とは?
「外用薬」は、体の表面、特に皮膚や粘膜に直接適用する薬のことを指します。
これは、クリーム、ローション、ジェル、スプレー、またはパッチなどの形で提供されます。
外用薬は、特定の部位の症状を直接治療するために使用されます。
皮膚の上から直接作用し、痛みを和らげる、かゆみを止める、炎症を抑える、または感染を防ぐなどの効果があります。
例えば、皮膚の乾燥や湿疹を治療するための保湿クリームやステロイドクリーム、虫刺されやアレルギーによるかゆみを和らげるための抗ヒスタミンクリーム、または、頭皮の問題の改善を目指すシャンプーやスカルプローションなどは外用薬の一例です。
AGA治療の基本的な流れ
患者の薄毛の進行状況や生活環境、体質を聞き取り、患者一人ひとりの状況を理解します。
薄毛に対する悩みや不安、治療に対する目標を共有し、それに適した治療計画を立てます。
また、生活習慣の改善や栄養補給など、薄毛の改善に役立つアドバイスも提供します。
カウンセリングの内容を基に、医師が診察を行い、診断結果と治療方針を患者と相談しながら決定します。
AGA治療薬は体の中で様々な働きをするため、患者の体が薬を正常に処理できるかどうかを確認する必要があります。
患者の体質や病歴により、治療薬の副作用のリスクを評価するためにも重要な検査です。
患者の症状に合わせたAGA治療薬が処方されます。
AGAの進行状況、治療の効果、副作用の有無などを定期的に確認します。
治療の効果を評価し、必要に応じて治療内容の調整などを行います。
AGA治療に係る標準的な費用
AGA治療を行う際に必要な費用は、抜け毛や薄毛を予防したいのか、また、どの程度まで発毛効果を得たいかなど目的によって異なります。
AGA治療は基本的に自由診療です。
円形脱毛症の治療とは違い、通常は保険が適用されないため注意しましょう。
薄毛・抜け毛予防が目的の場合
薄毛や抜け毛の予防が目的の場合、1カ月あたりの費用は3,000円~10,000円が相場です。
自由診療のため同じ治療薬でもクリニックによって料金は異なりますが、プロペシアやザガーロ、それぞれのジェネリックのうち一種類が処方されます。
そのため、料金のばらつきは少ないでしょう。
治療費を抑えたい場合は、ジェネリックを取り扱っているクリニックがおすすめです。
また、カウンセリングや初診時に治療を開始することを決めた場合、診察料や薬代を含め初月の費用が0円になるクリニックもあります。
発毛が目的の場合
発毛が目的で内服薬と外用薬を組み合わせた治療を行う場合、1カ月あたりの費用は10,000円~30,000円が相場です。
自由診療であることに加え独自の治療法を取り扱っているクリニックもあるため、費用のばらつきが大きくなる傾向があります。
治療の種類によっては費用が増えるため、治療を受ける際は医師と相談することをおすすめします。
また、初診時に治療開始を決定したりオンライン診療を利用したりすることで、初月の費用が0円になるケースもあります。
メソセラピーの費用
発毛率や発毛スピードを上げる目的で頭皮内に有効成分を直接注入するメソセラピー施術を行う場合、追加費用が発生します。
費用は1カ月あたり11,000円~66,000円と幅があります。
これは、クリニックによって使用する薬液や注入方法などが異なるためです。
使われる薬液には成長因子やミノキシジル、ビタミン類などが含まれ、注入方法は注射器のほかダーマローラーやレーザー照射などがあります。
メソセラピーに近い治療法にHARG療法がありますが、メソセラピーよりも高額になる傾向にあります。
診察料や検査料
AGA治療を受ける際、診察料に加え血液検査やAGA遺伝子検査が行われることがあります。
検査料金は0円~5,000円とクリニックによって異なります。
また、再診料が必要なクリニックもありますが、2回目からは薬代のみ発生するケースもあります。
AGA治療の期間及び回数
AGAの治療期間や時間ごとの変化には個人差があります。
治療の内容と効果を観察し、医師と相談しながら治療を進めていきましょう。
治療期間は個人差がある
治療期間は、症状や目的によって3~12カ月と個人差があります。
基本的にAGA治療は、ヘアサイクルを改善し、もとの健康な髪を増やすことが重要なため長期的に考える必要があります。
特に薄毛が進行していて、しっかり発毛させたい場合は1年、2年と治療期間が延びるケースも少なくありません。
また、理想の密度を達成した後も予防目的で治療を継続することがあります。
その場合、薬の種類を変えたり服用する量を減らしたりします。
時間ごとの変化
AGA治療を始めて効果が出る場合の一般的な時間ごとの変化は次のようになります。
AGA治療を開始してから1カ月後までは、ほとんど変化は実感できないでしょう。
ここで何も変わらないからといって、薬の服用をやめないように注意してください。
治療開始後1カ月を過ぎると、徐々に抜け毛が増えてくるため薄毛の進行が加速していると思われがちです。
しかし、抜け毛の原因は治療薬の働きによってヘアサイクルが正常になる過程で、細く短い髪の毛が抜け落ちる初期脱毛のため問題ありません。
むしろ治療効果があらわれている証拠でもあるため、ここで治療をやめないようにしましょう。
そして治療開始から4~6カ月からは、髪の密度が高くなったり髪の毛が太くなったりするのを実感します。
この段階に至っても何も変わらない場合には、治療の中止や治療方法の変更を検討する余地があるでしょう。
クリニックによっては、マイクロスコープを使って経過を詳しく観察します。
治療の辞め時や予防への切り替えなど、医師と相談しながら進めていくことが大切です。
治療回数
AGA治療は患者が納得するまで継続されます。
その間、基本的に内服薬は1日1錠服用し、外用薬は1日2回頭皮に塗布します。
通院ペースは処方される治療薬の量によって異なります。
30日分の治療薬を処方するクリニックが多いですが、90日分処方してくれるケースもあります。
オンライン診療を行っているクリニックでは通院する必要がなく、1~3カ月ごとにテレビ電話やスマートフォンのアプリなどで診察を受けます。
またメソセラピー施術を並行して行う場合は、2~4週間に1回のペースで通うことになります。
AGA治療に係る主なリスク
AGA治療は男性ホルモンに影響を及ぼす特徴があるため、治療中は献血できず、不妊治療に悪影響を及ぼす可能性があるため注意しましょう。
献血できなくなる
AGA治療中の献血は厳禁です。
AGA治療薬の成分が含まれる血液が、未成年者や女性に輸血されるのを防ぐためです。
プロペシアやザガーロなどの内服薬は、女性にとって禁忌薬になっています。
服用することはもちろん、経皮吸収されるため触れることもできません。
特に妊娠中の場合、胎児のホルモンに影響を及ぼす危険性があります。
そのため、プロペシアは最低1カ月、ザガーロの場合は最低3カ月は服用しない期間をつくる必要があります。
不妊治療に悪影響を及ぼす可能性がある
胎児に悪影響を及ぼす可能性が低いことは、海外の臨床試験で証明されています。
しかし、可能性がまったくないとは言えないため不安に思う方もいるでしょう。
そのため、不妊治療中のように精神的な安定が必要な時期は、献血時と同様に治療薬を服用しない期間を設けることをおすすめします。
AGA治療に係る副作用
プロペシアやザガーロ、ミノキシジルなどのAGA治療薬にはそれぞれ特有の副作用が存在します。
副作用や不安感が強く出る場合は、医師と相談しながら治療を行いましょう。
薬の量を減らしたり薬の種類を変えたりすることで、症状が軽くなることがあります。
具体的には次のような副作用が確認されています。
倦怠感や食欲不振
内服薬の服用で、倦怠感が出たり食欲が減少したりするなどの副作用が出ることがあります。
服用した薬が肝臓で処理されることで、肝臓に負担がかかるためです。
そのため、治療前や治療中に診察だけでなく健康診断を行っているクリニックも多いです。
また、ミノキシジルによる血圧の変化がだるさを誘発することもあります。
肝機能障害
肝臓に持病がある場合、肝機能障害が副作用として出てしまうことがあります。
ただし、プロペシアの服用で副作用が出る確率は、たいへん低くなっています。
肝臓に持病を抱えている方に限らず、この点について心配な方は、診察時に医師とよく相談することをおすすめします。
性欲の減少
内服薬のプロペシアやザガーロは男性ホルモンに影響を与えている可能性があることから、性欲の減少も副作用としてみられます。
勃起不全
内服薬の服用で勃起不全(ED)の副作用が出る可能性もあります。
性欲の減少と同様に、AGA治療薬が男性ホルモンに影響を与えることが原因です。
ただし、EDの発症は薬以外にも様々な原因が考えられます。
以前からED気味だったりストレスが多かったりする場合、EDになりやすいといえるでしょう。
また、AGA治療でEDになるという思い込みや不安が副作用を引き起こすことがあります。
実際に、ザガーロと偽薬で副作用が出る確率を比較した結果、ほとんど差がないことがわかっています。
ED治療薬もあわせて処方しているクリニックもあるため、不安な方は相談してみましょう。
全身の多毛症
ミノキシジルを使用することで、頭髪だけでなく全身の体毛が濃くなることがあります。
濃くなる部位は顔や胸、腕、脚など全身に及び、外用薬よりもミノキシジルの内服のほうが症状が強く出る傾向にあります。
治療中は多毛症の症状が続きますが、濃さには個人差があります。
治療しながら症状を抑えたい場合は、脱毛するなどの対処が必要です。
立ちくらみやめまい
ミノキシジルの影響で血圧が低下することで、立ちくらみやめまいが起きることがあります。
AGA治療の初期段階で起こりやすい副作用です。
そのため、治療を続けていくと徐々に収まってくるでしょう。
症状が軽くならない場合は、ミノキシジルの濃度を低くしたり塗布を中止したりします。
頭痛
ミノキシジルの影響で頭痛が起きることがあります。
これは、ミノキシジルの持つ血管拡張作用によって神経に血管が当たるためです。
頭痛が強く出る場合、吐き気を催すケースもあります。
その場合、自己判断で鎮痛剤を飲む前に医師に相談するようにしましょう。
頭皮のかゆみやかぶれ
外用薬を頭皮に塗布することで、かゆみやかぶれ、赤みが発生することがあります。
外用薬が肌に合わないこと以外にも、習慣が変わったことで一時的に起きることがあります。
また脂漏性皮膚炎が悪化することで、強いかゆみが発生するケースもあります。
脂漏性皮膚炎は健康な髪の生育を阻害する原因になるため、外用薬の種類を変える、使用を控えるなどの対処が必要です。
クリニックによっては、AGA治療中の頭皮環境を整えるために薬用シャンプーやコンディショナーを処方しているところもあります。
手足のむくみや体重増加
ミノキシジルの副作用でむくみが発生することがあります。
外用薬の塗布よりも内服で起きやすい副作用です。
ミノキシジルの血管拡張作用によって血流が増えるものの、血液を戻す力はほとんど変わらないことからむくみが起きます。
腎臓の負担が増えることでむくみが出る原因も考えられます。
むくみが起きる部位は全身ですが、顔や手足が目立ちやすいでしょう。
また、このむくみの症状から体重の増加が起きると考えられています。
動悸や息切れ
ミノキシジルの外用や内服で動悸や息切れが起こることがあります。
ミノキシジルを体内に取り入れることで心臓への血流量が少なくなり心臓の酸素量が減少すると、同時に肺の負担が増えます。
その結果、動悸や息切れなど循環器系の副作用が発生してしまいます。
動悸によって胸痛や不整脈を引き起こす場合もあります。
症状が収まらない場合や強く出てしまう場合は、外用薬や内服の容量を減らす、内服をやめるなどの対処が必要です。
自分にあったクリニックを選んで治療を行いましょう!
AGA治療は、専門クリニックや皮膚科以外にも多くのクリニックで行われています。
クリニックによって取り扱っている処方薬や治療法が異なるほか、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医や毛髪診断士が在籍するなど特徴も様々です。
医師やクリニックとの相性もあるでしょう。
そのため、まずはクリニックに足を運んで、カウンセリングや診察時に雰囲気を確かめながら料金やプラン、治療方針などをしっかり確認することが大切です。